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チッコリーニ×OEK [コンサート]

2011年11月2日(水) 19:00~ @石川県立音楽堂コンサートホール

W.A.Mozart:
 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K.527
 ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466

  *  *
 ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K.333
 ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.311 「トルコ行進曲付」

(Encore) F.Schubert: クーペルヴィーザー・ワルツ
       C.A.Debussy: 前奏曲集第1巻より 「ミンストレル」
       E.Granados: スペイン舞曲第5番 ホ短調 「アンダルーサ(祈り)」

  アルド・チッコリーニ(Pf.)  トーマス・カルブ(Cond.)
  オーケストラ・アンサンブル・金沢


8月に南仏で行われたラ・ロック・ダンテロン音楽祭にて、OEKとチッコリーニが
共演したことをきっかけに、今回、なんと金沢にチッコリーニが来てくれた!
御歳86のこの偉大なるピアニストは、東日本大震災に心を痛め、ボランティアで
チャリティコンサートをしたいとの一念で、日本公演はこれが最後になるであろうと
思いつつの来日であったらしい。
そういうわけで、当初は東京のみの公演予定であったところ、ラ・ロック・ダンテロン
での歴史的な名演を経て、金沢にきてくれることになった。
金沢に住んでいて、本当に良かった。

ラ・ロック・ダンテロンの公演の様子は、フランスのTV局ARTEが配信していて、
私も何度となく視聴しつつ、友人たちにも宣伝していたのだが、これがふだんは
ほとんどクラッシックを聴かないハズのNさんのハートを直撃!
ロックやジャズが基調のバーであるはずのNさんのお店では、店主自らお客さんに
この映像を紹介するという、ふだんの店の音楽を好む常連さんにはなんとも居心地が
悪かったであろう(しかし私にはとても幸せな)夜も何度かあったほど。
というわけで、いつものクラッシック仲間のQさんに加え、この日はNさんもご一緒に、
張り切って音楽堂に出かけたのでした。


今回は前半がOEKとの共演、後半はピアノソロという、変則的な構成である。
1曲目はOEKのみの「ドン・ジョヴァンニ」。
いつもはオーケストラを聞く場合は2階席を好むのだが、今回はピアノを聴くことだけを
考えて、前から3列目やや左よりの座席をとったところ、やはりオーケストラの音は
第1ヴァイオリンの音がダイレクトに聴こえすぎて、あまりバランスが良くなかった。
後ろの方の演奏者もよく見えないし、やっぱり上から見る・聴く方が楽しい。
全体の出来としても、まぁ1曲目、前座だし、客演指揮者さんだしね…
いつもの井上さんみたいに慣れたもの、というわけにはいかないのかな。

さて、いよいよチッコリーニの登場である。
オーケストラも、いきなりぴきっと引き締まる。もう、さっきと音が全然違うのだ。
この日はオール・モーツァルト・プログラム。いつだったか能天気とか書いたもので
モーツァルト嫌いと思われているような節がないでもないのだが、別に嫌いではない。
モーツァルトはたしかに天才で、何の苦労もなく音楽をサラサラ書いたかもしれないが、
その背後には、本当に音楽が好きで、生きていることが好きで、世界の調和を愛して
いて、だからこそ、あれほど自然に優れた音楽を生み出せたのではないかと思う。
後年、音楽はロマンスや、苦悩や、祖国愛や、不条理や、様々なものを表現するように
なったわけだけれども、モーツァルトの時代には、まだ音楽がひたすらに音の美しさ、
音の調和を追求するものであったように、改めて感じた。
そしてチッコリーニは、そのモーツァルトの音楽を、淡々と、丁寧に、紡いでゆくのだ。
よけいな情感を排し、ただただ音に忠実に、そうして奏でられた音は、純粋な音楽
――というと語弊があるだろうが、何かを表現するための音楽ではなく、
ただ音楽として純化された、かつての人々が音楽の中に神の摂理を見出し、完璧な
その摂理を具現しようとしたような、音楽のための音楽、といったものを、感じた。

休憩中にオーケストラ席は撤去され、舞台はソロリサイタル仕様に。
そしてOEKのみなさんも着替えて続々と客席に現れた。
後半はピアノ・ソナタを2曲。指使いがハッキリと見える好位置で、音がダイレクトに
聴こえる。多彩なタッチはものすごく勉強になった。
穏やかに、ゆったりと、フォルテでも決して激することはなく、ピアノでも音の一粒一粒が
際立っている。輪郭はくっきりしているのに、どこにもとがったところのない、フェルトの
ようなやさしい肌触りの、ハッキリと明瞭な音。
淡々としているようで、限りない平穏と深い愛情を感じさせる演奏。
おっとっと、という箇所もいくらかあったが、これだけの演奏だとそれが傷にならない。

アンコールはラ・ロック・ダンテロンと同じ、クーペルヴィーザー・ワルツとミンストレル。
やさしいやさしいシューベルトは、子守唄のようにあたたかくやわらかく、美しい。
ミンストレルは飛んだり跳ねたり、元気よくお茶目な、ユーモアたっぷりの演奏。
そしてもう一曲、鳴り止まぬ拍手に時間を気にする素振りを見せながらも演奏して
くれたのは、グラナドスのアンダルーサ。ゆったりと哀愁を帯びた、まさに「祈り」。
それは情熱のスペインものらしからぬ演奏ではあったかもしれないが、
涙が出るほど美しい演奏だった。

スタンディングオベーションに応えて何度も出てきてくれるのが気の毒になるほど、
ゆったりとした少々不安のある足取り、背もずいぶんと曲がって、見た目は本当に
年齢相応のお爺ちゃんである。なのにあの指の動きはなんなんだろう。
そして動き以上に、あの指の紡ぎだす音は。
この演奏を生で聴くことができて、本当に幸せでした。
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コメント 2

真珠

はじめまして。
「チッコリーニ」で検索してたどり着きました。
金沢公演の内容を書いていただいてありがとうございます。
私は2003年からチッコリーニ氏を聴き続けています。
毎回、想像を超える素晴らしい演奏に感動してきました。
東京のコンチェルト&ソロも素晴らしかったですが
できれば金沢の公演も行きたかったです。
去年が最後かと思っていたので今年演奏を聴けて本当に幸せでした。
by 真珠 (2011-11-13 22:28) 

Camilla

真珠さん、はじめまして。
私は生で聞いたのは今回が初めてでした。去年、時間が合わなくて聴きに行けなくて、もう機会はないかと思っていたところだったので、今回地元で聴けて、とても嬉しかったです。
金沢公演の様子は、OEKfanさんという方が書かれたレビューにもとても詳しく書かれています。http://www.oekfan.com/review/2011/1102.htm
by Camilla (2011-11-14 18:17) 

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