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OEK・五嶋みどり×井上道義 [コンサート]

P.I.Tchaikovsky: バレエ組曲「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割り人形」より
 「眠りの森の美女」より ワルツ
 「眠りの森の美女」より アダージョ
 「眠りの森の美女」より パノラマ
 「くるみ割り人形」より  こんぺい糖の精の踊り
 「白鳥の湖」より     チャルダーシュ
 「白鳥の湖」より     情景
 「くるみ割り人形」より  花のワルツ
   *  *
P.I.Tchaikovsky: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
 (Encore) E. Chausson: ヴァイオリンと管弦楽のための「詩曲」

  五嶋みどり(Vn.)  井上道義(Cond.)
  オーケストラ・アンサンブル・金沢


11/3のコンサート行脚の最後にしてメインを飾ったのが、この五嶋みどりさんのコンサート。
ハオチェン君のピアノに魂を飛ばされ、やっと戻ってきたと思ったらこんどはみどりさん…
1日で2回も天国に強制連行されたような感じ。その名の通り、本当に文化をこのうえなく
満喫できた、なんと充実した、夢のような一日だったことだろう。
とんでもなく幸せで、同時にとっても不幸だ。だって、もう半端なチャイコンは聴けない…。



オール・チャイコフスキー・プログラムということで、前半はOEKによるバレエ音楽。
踊るような井上さんの指揮、跳ねるような歯切れのいいオーケストラ、バレリーナの踊る
姿が見えるような、とても楽しい演奏。といっても、バレエは見たことないんだけど。
(コンサートの前にチケットボックスで、12月のバレエ「くるみ割り人形」の公演は完売だと
言われたばかりなのだった…残念。)
チェレスタやハープが効果的に使われているのも、おとぎ話のような雰囲気で素敵だ。
華やかで壮大な花のワルツで、前半はしめくくられた。
プログラムとしてはわりと軽めかつ短めな感じだった。

そしていよいよみどりさんのヴァイオリン協奏曲である。
もう、その音色の美しさといったら! 単に艶やかとか美しいとか色っぽいとかではなく、
ありとあらゆる表情、感情を秘めた、深い深い音色。泣きたいほどに心に沁みいる、
とてもとても大切な思い出をそっと取り出すような、美しくて、哀しくて、切なくて、艶やかで、
鮮やかで、晴れやかで、センチメンタルで、ノスタルジックな、主題を奏でる音色。
細い細い、かすかな音で奏でられるメロディさえ、どうしてこんなにも鮮やかに浮かび上がり、
苦しいほどにまっすぐに心に突き刺さってくるんだろう。

オケの団員さんたちが、井上さんの指揮を見るよりもむしろ、全身を耳にしてみどりさんの
ソロに耳を傾け、そのリズムに、テンポに喰らいついてゆく。
みどりさんの演奏に、協調性がないというわけではない。むしろオケが中心になるところ
なんかでは、とても気持ち良さそうに合わせている。けれども、いざヴァイオリンが主導する
箇所では、みどりさんがこう弾きたいというよりも、こうあるべき音楽がみどりさんを導いて、
忘我の境地で他のすべてのことを気にかける余裕なんてなくなってしまう、そんな感じだった。
ミューズに手を引かれてあっというまに天高く舞い上がってしまうみどりさんに、
オケの人たちは必死に手を伸ばし、天才にしか感じることのできないミューズの息吹を、
みどりさんの演奏を通じて何とか感じ取ろうと、せめてその一端に触れようとしているような。
本当の意味でオケを従えた、こんなコンチェルトを、初めて見た。
OEKの方々も、こんな人との共演は、本当に大変だっただろうと思う。

聴衆もまた、みどりさんのソロの箇所ではみんなが無意識のうちに息を詰め、ものすごく集中
して聴き入ってしまう。ヴァイオリンが抜けてオケのみの箇所になると、ふっと会場の空気が
緩むのである。それほどに、彼女のヴァイオリンはとんでもないチカラをもっていた。
音色の美しさ、多彩さ、テクニックの素晴らしさ、解釈の的確さ、演奏の力強さ、そういう言葉で
説明できるものかもしれないけれど、そういった陳腐な言葉がナンセンスに思えるくらい、
この人は音楽そのものに溶け込んで、それをごく自然に体現しているのだ、という印象。
巧い人はたくさんいるけれども、本当の天才とはこういうものなのかと、しみじみと実感した。

スタンディングオベーション… したかったけど、あんまり素晴らしかったんで、ほとんど腰が
抜けちゃった。とてもじゃないけど立ち上がれません、あんな演奏聴かされたら。

ふだんみどりさんはアンコールをしないそうなのだけれど、井上さんによれば「文化の日だから
特別に」、アンコール… というよりは、追加でもう一曲。
ショーソンの「詩曲」は15分ほどもあるコンチェルトの曲だから、もはやこれはアンコールの域を
超えている。なんと嬉しいサプライズ!
静謐ですこし不気味な全体の曲調に、ヴァイオリンがさらに不安を煽るようなメロディを奏でる。
哲学者の思索のような、古代の神話の世界のような、宇宙の神秘のような、さまざまな
イメージを掻き立てる、不思議で魅力的な曲だった。
またこのヴァイオリンが、神憑ったような、どこまでも透徹した神秘的な音色で、チャイコフスキー
とはまったく違った魅力、いや魔力がぎっしりと詰まっていて、魂を鷲掴みにされてしまった。

もう、コンサート終了後は、ほとんど酩酊状態。まともに歩けない、しゃべれない。
頭の中からあの鮮烈な音色が消えてくれない。
ああ、どうしよう。ほんとうにもう他の人のヴァイオリンを聴けなくなっちゃったかも…
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