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庄司紗矢香&カシオーリ デュオリサイタル [コンサート]

Ludwig van Beethoven:
ヴァイオリン・ソナタ第3番 変ホ長調
ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」 ヘ長調
         *    *
ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」 イ長調
(Encore) L.v.Beethoven: 
  ヴァイオリン・ソナタ第7番 第3楽章 スケルツォ
  ヴァイオリン・ソナタ第8番 第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット

  庄司紗矢香(Vn.)  ジャンルカ・カシオーリ(Pf.)

富山県入善町のコスモホールで、庄司紗矢香さんのデュオリサイタルがあるというので、
はるばる出かけてきました。
このコスモホールは、演奏家たちにも高く評価されているらしく、ギドン・クレーメルや
アルバン・ベルク・カルテットなども何度もこのホールで演奏しているようだし、
このホールで録音されたというCDもなかなかに錚々たるものがあって、地方の
県庁所在地でもない小さな町にこんなホールがあるとはかなり驚きだった。

今回は、オール・ベートーヴェン・プログラム。庄司さんとカシオーリさんがベートーヴェンの
ヴァイオリン・ソナタのCDを出した記念の演奏会らしい。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、「ヴァイオリン」ソナタというよりも、原題どおり
「ピアノとヴァイオリンのための」ソナタであって、ピアノは単なる伴奏ではなく、
ヴァイオリンとまったく対等の、まさに協奏というのがふさわしいスタイルの曲である。


まずは第3番。あまり演奏される機会はない曲だ。私も聴いたのは2回目くらいかな?
1798年の作だから、まだ耳の状態もそれほど悪化してはいない頃だろうか。
古典派の面影が残る、若き日のベートーヴェンの、明るくて朗らかな曲である。
ピアノも、それほどは前に出ていなくて、大人しめの伴奏の比重が大きいので、
そのぶんヴァイオリンがとても華やかである。
庄司さんのヴァイオリンはかのストラディヴァリウスだそうだが、本当に澄んで、明るく、
よく伸びる。音量としてはけして大きくない箇所でも、ものすごくクリアで、印象的なのだ。

第5番「春」。ベートーヴェンのソナタで名前のついているもののほとんどは、本人がつけた
標題ではなく、後世の人間がそのイメージなどからつけた愛称であるが、やはり演奏する
際にはそのタイトルは気になるもの。
欧州の春というと、重く垂れ込めた曇り空の寒い冬の後、解放感にあふれた青空のイメージが
あって、これまでに聴いたことのあるこの5番もそういう印象のものが多かったのだが、
庄司さんの「春」は、とても日本的な印象を受けた。
たとえば、花曇りや春霞。少し霞んだような、やわらかい空気。日本の春の代名詞である桜も、
けして色鮮やかな、華やかなものではなく、淡い淡い色合いで、しかもすぐに散ってしまう儚さ、
もの哀しさが伴う。卒業式の日の、晴れがましいとともに別れの寂しさが根底にあるような、
新生活への期待と不安が綯い交ぜになった、そんな「春」。
底抜けに明るい解放感よりも、穏やかで、やわらかくて、しっとりとして、少し感傷的な、
日本の「春」にまつわるいろいろなことを思わせる演奏だった。
庄司さんの衣装も、ピンク色に花の刺繍があったけれども、あれも桜だろうか。

休憩を挟んで、「クロイツェル・ソナタ」。
この曲が捧げられたのがルドルフ・クロイツェルであったことからこう呼ばれる。
もともと捧げる予定だったのは、やはりヴァイオリニストであったブリッジタワーだったのだが、
彼とはある少女をめぐって仲違いしてしまい、結局クロイツェルに捧げられたとか…
完全にピアノがヴァイオリンと同じように主役を張っている、激情に満ちた曲である。
そう、第1楽章は、まさに「激しい」というのがぴったりな曲だと思っていた。
しかし、この2人の演奏は、まったく印象が違う。激情ではなく、キビキビとした、どんな
非常事態にも動じずに、冷静にすべきことをこなしていく、そういうベテランのお仕事振りを
思わせるような、とても格好いい演奏だった。
第2楽章は変奏曲。過度に感傷に流れるのではなく、淡々と、しかしやわらかく軽やかに、
ヴァイオリンがピアノが、変化するメロディを奏でてゆく。
かなり長くて、しかも最終変奏の都合上繰り返しも省略できず、下手な人の演奏では退屈して
眠くなってしまうこともあるのだが、この2人の演奏はもう退屈するどころではない。
大袈裟な表現はないのに、ぐいぐい引き込まれる。聞き惚れているうちに終わってしまった。
第3楽章も、それほど走りすぎることなく、軽やかに、踊るように進んでいく。
第1楽章のお仕事のキビキビモードから、今度は趣味の時間、かな。慣れた余裕を感じさせる、
でもとても楽しんでいる、そんなイメージだった。

アンコールはやはりベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタから。
もっと続きを聴きたくて、1楽章だけで終わってしまうのが惜しくて、真剣に拍手をしなかったら
続きをやってくれないかなーとか思ったし、他のお客さんに「なんで拍手するのよー」と文句を
言いたかった(笑)

カシオーリさんのピアノはわりと控えめな印象で、ヴァイオリンの庄司さんがリードしているかと
思うと、意外にカシオーリさんがしっかり手綱を握って、庄司さんがテンポを上げようとしても
頑として譲らなかったり。そのあたりの駆け引きはけっこう楽しかったけど、全体としてすごく
息があっていて、どちらも我勝ちなところはなく、いい感じに本当に「協奏」している感じで、
デュオとしてもとても素晴らしかったです。
今のところこの2人のベートーヴェンの録音は2番と9番のカップリングだけのようだけど
(少なくともロビーで販売していたのは)、とても新鮮なベートーヴェンだったので、できれば
全曲聴いてみたいな、と思いました。
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